私の人生において、何かが起こるときは、いつもこんな天気だ。
雲1つない空が広がっていて、前の日の雨の湿気を伴っている。

今日も、何かが起きるのだろうか。









「どうかしましたか?」
声をかけてきたのは、しのぶさん。私がお世話になっている、この蝶屋敷の主だ。
蝶屋敷は、所謂鬼殺隊の診療所のようなものだ。怪我をした隊士などがここで治療したり、機能回復訓練を受けたりする。
私はここで、隊士たちの看病や世話などをしている。

「あ、いえ、よく晴れてるなーと」
「そうですね。昨日は雨でしたし、やっぱり晴れている方が気分が良いですね」

私も、そうですね、と返すと、しのぶさんが懐かしむように続けた。

「あなたと初めて会った日も、こんな日でしたね」
「・・・はい」
「あれから2年。私たちの力が及ばず、あなたには辛い思いをさせてしまっていますね」
すみません、と小さく言うしのぶさんに、私は慌てて首を横に振った。
「あ、謝らないでください!しのぶさんたちのせいではないです」
「なまえさん・・・」
「むしろ感謝しているんです。私なんかをここに置いてくれて。皆さん、すごく良くしてくださるし、本当に感謝してもしきれません」

そう言うと、しのぶさんはいつものように笑ってくれた。
うん、やっぱりしのぶさんの笑顔は素敵だ。








ふと、賑やかな声が耳に入ってきた。

「なんだか、今日は一段と賑やかですね」
聞くと、しのぶさんは少し呆れたように溜め息を吐いた。
「新しい隊士の子たちです。面白い子たちなんですけど・・・。なまえさん、またどうかよろしくお願いしますね」
「もちろんです」

何やらちょっと含みを持った言い方が気になるけど、できることはしっかりやろう。
任せてください、と握り拳を作って言うと、張り切りすぎは良くないですよ、と釘を刺されてしまった。


雨上がりの晴れの日、何かが起こる。
今日もそんな日かもしれない。


私は新しい出会いに胸を踊らせた。